中村天風(なかむら てんぷう)とは?
今回は本の紹介です。
中村天風という方の名前は聞いたことがある人が多いと思います。
よく本屋の自己啓発本のコーナーに本が置いてあったり、和服姿の眼光鋭い中村天風氏の写真入りのPOPとともに本の紹介がされていたりするかと思います。


最近では、野球の大谷翔平選手がメジャーリーグに行く前に中村天風の本を愛読していたとのことで話題になっており、大谷選手をきっかけに中村天風を知った方も多いかもしれません。
本屋で一番見かけるのは『運命を拓く』、他は『君に成功を贈る』でしょうか。
漫画版も出ているようで、本屋で見かけたことがある方も多いでしょう。
『成功の実現』の最後に記載されている「中村天風師 略年譜」によれば、中村天風という方は、
1876年(明治九年)に現東京都北区王子で九州福岡の柳川藩主一門の出で、大蔵省抄紙部長として働く父と江戸生まれの母の三男として生まれた
そうです。
を見るに、明治九年はまさに大蔵省が王子に官営製紙工場を建設して、証券や切手、紙幣の国産化に向けて動いていた時期のようで、
当時王子にあった大蔵省紙幣寮の官舎に印刷技師として来日していた英国人夫妻にかわいがられ、日常の中で英会話を身に着けることができた
とのことで、恵まれた環境で育てられたようです。
1889年(明治22年)頃に東京本郷の小学校を卒業後、九州福岡の修猷館に入学
とあり、修猷館といえば、1784年開館の福岡藩藩校として、現在も福岡トップレベルの進学校として知られている伝統ある高校です。
その後、1892年(明治25年)16歳で修猷館を退学し(この退学の経緯は『成功の実現』の中で語られており、現在ではあり得ないであろう事件やその後の警察とのやり取りが記されている…)、玄洋社の頭山満に預けられ、軍事探偵の鞄持ちとして日清戦争開戦前の満州や遼東半島の偵察や調査に従事、1902年(明治35年)26歳からは日露戦争に向けた軍事探偵として活躍したそうです。
29歳で日露戦争から帰還。30歳で当時不治の病であった結核を発症、死に直面する。
33歳からアメリカやフランス、イギリス、ドイツに渡り、救いの道を求めるが求める答えは得られず、死地としての日本への帰国途中にカイロで出会ったヨガの聖人に連れられ、ヒマラヤの麓(インド、ネパール国境)で2年以上に渡りヨガの修行を行う。そこで得た悟りから、結核から回復し、後に一人で辻説法を始め、これが『成功の実現』の基となる講演活動へとつながっていく。
なお、『成功の実現』の第十章「成功の実現」は昭和39年(1964年)10月12日に行われた「信念と奇跡の事実」という講演テープが基になっているようです。天風氏が亡くなったのが昭和43年ですから、死の4年前、88歳の頃の講演ですね。
※『成功の実現』p397 「成功の実現」講演テープ出典 より
1968年(昭和43年)92歳 12月1日 帰霊 とあり、非常に長生きされていますね。もっと昔の方というイメージがありましたが、昭和の後半ということで、私の感覚では割と最近まで生きていらしたんだと思いました。
『成功の実現』ってどんな本?
自己啓発といわれるジャンルの本はあまり好きではないのですが、一時期よく読んでいたこともありました。
『成功の実現』という本は私が人生で買った中で一番高い本でした。
この本は知り合いの方の勧めで買ったのですが、自己啓発本と縁があるとは想像できない方で(「成功の実現」なんて題名の本を読む必要のないくらい世間的に既に大成功を実現されている方でした)、そういった方が勧めるということは学ぶところがあるに違いないと思い、即日購入したのを覚えています。
3冊セットのものを購入し、『成功の実現』の他に『盛大な人生』、『心に成功の炎を』の2冊があります。
これら3冊が1冊ずつになったものもあるのですが、確かハードカバーのものしかなく、個人的にハードカバーの本は読みづらくて好きではないので、東レのエクセーヌという人工皮革の高級装丁が施されたソフトカバーのものを購入しました。(エクセーヌの上に更にトレーシングペーパーのような薄い紙でカバーされています)
3冊セットで3万円だったはずです。
<追記>改めて確認すると、3,3000円ほどするようです。↓
Amazon 中村天風 成功哲学三部作
天風氏の講演CDも入っており、元はテープから起こしたものでしょうから、音質が悪い部分もあるものの、中村天風氏の貴重な肉声を聞くことができます。
『成功の実現』はこれら3冊の最後の締めの中の最終章(第十章)の表題です。

ちなみに第九章は「大いなる我が生命の力」でこの内容も私のお気に入りで、これまで何度も読み返してきました。
『成功の実現』以外の2冊『盛大な人生』、『心に成功の炎を』も非常にいい内容なのですが、やはり最後の『成功の実現』、そしてこの最終章が真骨頂だと思います。
このブログの名前「全ては人の想いから生まれる」はこの本からいただいています。
自分のものの受け止め方、考え方において、非常に影響を受けた本であり、今現在もこれからもこの本に書いてあることは、何かの折に何度も立ち返ってくる拠りどころというか、水準点のような存在であることは間違いありません。
信念の重要性
『成功の実現』の最終章、「第十章 成功の実現」は信念の重要性の説明で始まります。
以下、全て原文ままではなく、自分なりの言い回しでの内容紹介です。
信念が重要だと分かっている人であっても、信念さえ確固たるものになっていれば、自分の願うこと、思うことがすべて思い通りになるとまで確信できている人はいない。
天風氏が若い頃の方が信念の重要性に対してはうるさく言われてきた。しかし、理解していなかった。どうやって信念を確固たるものにするか、それは、想像力でもって、ああなりたい、こうなりたいという気持ちを一つの現実の絵として、はっきり映像化して自分の心の中に描かなければいけない。そして、それを絶えず消すことなく描き続け、燃やし続けなければいけない。
普通の人間は信念の重要性を頭では理解しているし、自分のああなりたい、こうなりたいという気持ちを具体的に描き、燃やし続けてもいるが、時々その火を消してしまっている。しかし、「思うことがそうやすやすと叶ってたまるものか」という気持ちで独り決めし、燃やしていた心の火を消してしまっている。ただ、自分で心の火を消してしまっていたことにすら気付いていない。
それでは信念は固まらない。それは信念になってない。例え誰が何と言おうと、世間一般の常識が何であろうと、自分はこうなると理屈なしに思い込み、鮮明に心の中で描き続け、燃やし続けて、夢に見るくらいまでにならないと、信念として出来上がってこない。
思っていること、考えていることが土台になって信念ができてくる。フワッと信念ができるわけではない。実在意識で思ったり考えたりすることが、それとつながっている潜在意識と結びついてくると、コンクリートが固まるように信念が完全に固まってくる。
心で考えるということ
人間がいろいろの物や事を思ったり、考えたりするのは一体何のためなのか、ということについて、本当の意味を知っている人は少ない。むしろそんなことを考えている人、正しく理解しようとしている人自体がほとんどいない。
思ったり、考えたりするのは人の心の当然の働きだくらいにしか理解していない。そこを理解しないといけない。それが分かると、今までとは全然違った見方、考え方で心の思い方、考え方を「取り扱う」ようになる。
思ったり考えたりするままに、思い考える人がほとんどで、思い考える事柄を取り扱い、適切に処理するということを人はしない。これをするようになると、心の思考というものがいかに驚くべき力を持っているか、言い換えればほとんど無限大の働きを行うものだという、本当の心の値打ちが分かる。
これは、私たちの周囲を見れば分かる。つまり、目に触れる全てのものは何もかも、宇宙の自然創造物以外の物は、「xxxxxxxx」から生み出されたもの。それ以外のものは何一つない。
それがそうと分かったら、人間の一生もまた、自分の心の中の考え方、思い方で良くも悪くも造りあげられるもんだということが分かる。哲学的な言い方をすれば、心の中の考え方や思い方が、自分が今現在あるがごとき自分にしているということになる。
全ての根源は人の心であり、その源は意識である
人は自分の思い方、考え方が形作った自分に今現在なっているとは思っていない。しかしそうではなく、自分の思い方、考え方が現在あるがごとき自分にしている。自分のああなりたい、こうしたいと思っていることが叶わないのは、自分のどうしようもないところでそうなっているのではなく、全て自分に与えられた心の思い方、考え方に起因している。
これが分からないと信念は固まらない。
天風氏はインドで「いいことだけ絶え間なく心の絵に描け」「無邪気な気持ちになれ」と教わっていたが、分かってみればこれが信念を固めるための秘訣だった。心で思ったり考えたりすることを想像力を応用して心のスクリーンに描き続け、想いを燃やし続けると、それが強固な信念になる。信念が固まったら、それは遅かれ早かれ具体化するのが必然となる。
人生は心ひとつのおきどころ。心はその人を創りもし、また壊しもする恐ろしいもの。